“Oz'Beats ~温故知新~” 展望
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オジサン向けBMSイベント"Oz'Beats"の開催が迫ってきました。
このイベントは、1980年代以前のクラブミュージック限定イベントとなっています。
とはいえ、BMS界の中心世代は高校生~大学生くらいと言われているため
年齢的に「馴染みづらい」「興味ない」「ていうか俺、生まれてないし」と考えている人も少なくないことでしょう。
しかしながら、「80年代クラブミュージック」は非常に奥深いものです。
今大会に登録可能なジャンルは意外と多岐にわたり、
食わず嫌いでスルーしてしまうには、あまりに勿体なすぎるイベントになるかもしれません。
そんな"Oz'Beats"について、開催直前になってしまいましたが小覧で概観していきたいと思います。
◆ 80年代とは?
制作条件である「80年代クラブミュージック」を検証する前に
まずは1980年代がどのような時代であったかを認識しておいて損はないでしょう。
80年代を一言で表すと、「歴史上、日本が最も繁栄していた時代」と言えます。
空前の好景気に沸き、経済成長はひたすら右肩上がり。
景気の指標の一つである日経平均(右図)もご覧の通り。
日本中にお金が有り余っていた時代でした。
そういった世情から、バブリーで成金趣味な風潮が流行し、
勘違いしたゴージャスさとでもいうべき文化が発展しました。
"Oz'Beats"の公式ページのデザインを見れば
そのダサさがどれほどのものか察することができるでしょう。
(そういう意味では非常に素晴らしいイベントページだと思います、笑)
音楽界では、松田聖子・中森明菜・ブルーハーツ・BOØWYなどが若者の支持を集め、
洋楽ではマイケルジャクソンとかマドンナとかが世界的人気を博しました。
かつて本家に収録された“Take On Me”や“Final Count Down”などは80年代の曲、といえば
BEMANIファンにも少しは親しみを感じてもらえるでしょうか。そうでもないか。
で、本題(?)となる80年代のクラブシーンですが、
この頃は「クラブ」ではなく「ディスコ」と呼ばれていました。
名前は違うけどやってることは同じです。行ったことないけど。
(後に風営法で規制され、法の抜け穴を突くためディスコからクラブへと改名することとなります)
80年代のバブル期を端的に象徴するディスコはジュリアナ東京(下図)でしょうか。
扇子を持ってお立ち台で踊るボディコンギャルたちは一世を風靡しました。行ったことないけど。
この時期のクラブ(ディスコ)ミュージックの特徴は色々ありますが、
シンセサイザーが普及して広く使われ始めた、というのが最も大きな点だと私は思います。
80年代はまだまだ電子楽器の発展期で、パソコンなどの普及は進んでいないこともあり
今の2010代の感覚で聴くと、音周りやらミックスやらに多分に違和感を覚えるかもしれませんが、
そういった部分の古さ・チープさ・味わい等を含めてこそ「80年代クラブミュージック」なのでしょう。
今日においてもファミコン音楽が支持されているように、80年代音楽も今なお大勢の人に支持されています。
とはいっても、実際に作品を聴いて評価するのは00年代を生きる私たちです。
「80年代音楽らしい趣」と「現代に通じる80年代の素晴らしさ」の2つを両立させることが
イベント参加者が立ち向かわなければならない難問なのではないか…という予感がします。
◆ ジャンル考
80年代クラブミュージックということで、公式ページには登録可能/不可能ジャンル一例が挙げられています。
今のBMS界からすれば、ほとんど絶滅危惧種ジャンルばかりですね。
たとえ登録可能ジャンルであっても、例えばエレクトロが最も顕著ですが、
80'sエレクトロと00'sエレクトロでは全く異なる音楽ですので、その辺りは注意する必要がありそうです。
ここに掲載されてないジャンルで登録可能と思われるのは
ユーロビート・ハイエナジー・マイアミベースあたりでしょうか。
曲によってはエレクトロポップ・ジャズ・フュージョン系統も良さそうな感じです。
チップチューン・ニューエイジなども時代的にはOKですが、クラブミュージックと呼べるのか私は知りません。
それ以外のジャンルは大抵NGだと思います。
個人的にはドラムンベースなどは議論があって良い気もしますが、主催がダメと言ってる以上は従いましょう。
時代外れジャンル・創作ジャンルは全て失格対象です。お気をつけ下さい。
なお、先ほどは「絶滅危惧種ジャンル」などとも書きましたが、
実際、BMS界で上記の登録可能ジャンルがどのくらい制作されているかデータを取ってみました。
調査対象は2007年~2010年10月の約2600作品です。全てジャンル名から単純抽出調査です。
アンビエント・ヒップホップ・レイヴ・エレクトロあたりは現在も生き残っているとも言えそうですが、
他はほとんど壊滅状態。絶滅危惧種というか絶滅済みジャンルと言うほうが適切でしょうか。
最も作られているヒップホップでさえ、35/2600作品=1.3%ほどで、そのシェアは微々たるものです。
(ちなみに、たぶん界隈最多と思われるトランスは270作品=10.4%でした。約10倍弱の格差ですね…)
ですので、今大会は「普段のイベントではまずお目にかかれないジャンル選手権」になるのは確実です。
マイナージャンル好みの天の邪鬼プレイヤーにはたまらないイベントになるかもしれません。
作者さん方もせっかくのこの機会、普段作らないレアジャンルに挑んでみてはいかがでしょう?
◆ ルール確認
「1980年以前であること」「クラブミュージックであること」の2点の制限に気を取られがちですが、
今大会は他にも細かい規定が多数存在しています。
知らずに違反して失格を喰らったりしないよう、幾つか特徴的なルールをここで再確認してみます。
・登録曲は5鍵譜面を必ずメインの譜面とすること。
(7鍵、10鍵、所謂高難度アナザー等他の譜面は前述のルールを守っていれば同梱可能とする)
・上記メイン譜面(5鍵譜面)の難度は☆5以下とする(オジサンでもクリアできる難度を心掛けること)。
一番の落とし穴と思われるのがこれ。
5鍵がメインというのはともかく、☆5以下というのがなかなか難しそうな印象です。
低難度でどのようにゲーム性を主張するか、譜面制作センスも大いに問われることになりそうです。
・ジャンル無表記、ジャンル詐称の疑い、創作ジャンルの使用が発覚した場合は
失格となる可能性がある(ジャンル無表記は重大なミスとして扱いアーカイブの修正を認める)。
前項でも少し触れましたが、ジャンルは既存80年代クラブミュージックでなければなりません。
ジャンルを満たしていれば東方アレンジだろうが本家マッシュアップだろうが一切問題ないです。
それと、「ジャンル詐称の疑いは失格」という規定はなんだか超怖いような気もしますが、
『誰がどう判断するのか』という難しい問題があるので、余程の場合以外は適用されないと思います。たぶん。
・登録期間終了後のアーカイブの変更は失格となる可能性がある。
(重大なミスが発覚した場合はこの限りではない)。
5vs7、BOF2010、場外乱闘編、と最近のイベントは「公開後のアーカイブ改変」が認められてきましたが、
今大会では重大なミスを除いてアーカイブ修正は認められません。必ず完成させてから登録を。
・インプレッションは、評価期間終了まで登録楽曲の点数の閲覧は不可。
個人的に注目しているルールがこちら。
今大会では投稿したインプレの点数は全て伏せられるようです(インプレ数やコメントは閲覧可?)。
周りの点数に影響されずにインプレできるのか、本文が読める以上は特に大差はないのか、
それともインプレイヤーが怖がって投票行動自体を萎縮してしまうのか、私にはちょっと読めません。
いずれにせよ、インプレの現状に一石を投じる実験的ルールであると思います。
その他のルールは普段のBMSイベントに近い印象ですが、
確認のため、詳細については必ず公式ページをご参照ください。
◆ 出場予定者
Oz'Beatsに参加表明をしている人の一覧です。敬称略。カッコ内はソース。
漏れがあったらごめんなさい。今回は捕捉漏れが多い気がします。
(Twitterの発言に関しては、検索から機械的に引用しただけで前後の文脈等は考慮していません)
● 出場できそう
Nitrix 「BOFをお休みする分、オージービーツには出たいなあ。」(9/1 Twitter)
scytheleg 「まあとりあえずozbeatsに出るためにはハウス作ればいいね、やったことないしせっかくだからやってみたい」(9/1 Twitter)
Ras 「Oz'Beats用に作る曲は音源縛りしたら面白いだろうか」(9/8 Twitter)
nixx 「Oz'Beats出たいな。シカゴハウスあたりで…」(9/23 Twitter)
xenothium 「これOz'Beatsに出せるな」(9/29 Twitter)
haleit 「Oz'Beatsに出たいなあと思ってます。」(9/30 日記)
ume 「とりあえずオージービーツ用の曲が形になったので寝る」(11/5 Twitter)
● 微妙そう
Y.W 「曲が古臭いと言われた私にとってはなかなか気になるイベント。考えておくぜ」(9/5 Twitter)
ETIA. 「Oz'Beats挫折の予感しかしない まだまだ時間あるしチビチビ作っていくか・・・」(9/8 Twitter)
daisan 「BOFで忘れてたけどOz'Beatsどうしよう・・・」(9/25 Twitter)
FALL 「オージービーツはオジサン向け「クラブミュージック」ってとこにネックを感じている」(11/1 Twitter)
CRUNCH 「うおおおテンションあがってきた場外かOzにでるぞ!久々に作るぞ!」(11/2 Twitter)
BACO 「そしてOZ BEATSに出るか出まいか悩む 」(11/4 Twitter)
Bit Upper 「Oz'Beatsは一応それ用の曲を作ってはいますが間に合わない可能性が高いです。(mihoclapサン用)」(11/11 Twitter)
樟 「オージービーツ間に合わないかなぁ。レイヴ祭りになりせんよーに」(11/12 Twitter)
● しんでください
eicateve 「おなじく(俺のs_miho用) RT @ritsu25: Oz'Beatsは観客側に回ります (mihoclapさん用)」(11/11 Twitter)
参加表明はほどほどの数。ちなみに以前のBIDCアンケートで「参加したい」と答えた人は8人いました。
これらのデータから推測するに、最終的には20作品弱くらいの登録が見込まれるでしょうか。
5vs7以来ずっと大型イベント続きなので、このくらいの作品数のほうが合っているかもしれませんね。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
オジサン向けBMSイベント、とのことですが、
BMS界にはまだまだ若い界隈で、オジサン世代は決して多くありません。
Oz'Beatsは、10代・20代の若者が「オジサン音楽を背伸び(?)して楽しむ」イベントになるでしょう。
個人的な見どころとしては、20代作家(80年代生まれ)の「オジサン予備軍世代」 VS
10代作家(90年以降生)の「80年代には生まれてねーよ世代」の対決がポイントかなと考えています。
そして後者のなかから優勝作品が出たりすると、たいへん皮肉で面白い結果になる気がします。
若い作家さんも「興味ない・知らない」などと遠慮せずに、ぜひぜひ積極的に挑んでみてください。
もちろん、80年代の音楽事情に精通したオジサン作家の電撃参戦があるようなら
イベントにとってこれほど素晴らしいことはありません。歴戦のベテラン勢の出場にも期待しましょう。
登録期間は11月20日~23日。
土・日・祝日があるので、今から制作に取りかかっても何とかなるかと思います。
評価期間は11月23日~12月12日の約3週間。
かなり長めの日程で、作品を登録しておけばそれだけ長くイベントを楽しめるはずです。
オジサンから小中学生の若者まで、幅広い世代の参加を楽しみにしています。
Oz'Beats ~温故知新~
http://www5.hp-ez.com/hp/ozbeats/index
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コメント
此度はイベントをこのようにとりあげていただきありがとうございます。
ある種思い付きの産物であるこのイベントに他の人間の視点が入るのはなかなかにこそばゆいものがありますね(笑)。
>それと、「ジャンル詐称の疑いは失格」という規定はなんだか超怖いような気もしますが、
これについてはジャンルのチェックだけは主催側で目ざとくやりますよという牽制の意味も含んでます。
それこそ「最新のユーロトランスにヒップホップとジャンル記入して登録した」レベルでないと適用しませんのでご安心(?)ください。
「誰が」「どのようなジャンルで」登録するかが全く読めないイベントですが、逆に言えば私自身もその点が楽しみではあります。
明日にはもうイベントが開催しますがお互いに頑張りましょう。
投稿: waku2tan | 2010/11/19 10:34
エレクトロは最近は完全にエレクトロハウスの意味に置き換わってしまっているので、
http://www.youtube.com/watch?v=szIk4h8RfTo
こういう80年代のエレクトロは絶滅しているとみていいのではないでしょうか?
投稿: ポポス | 2010/11/19 17:20
今回のイベントは…ある意味でどんな曲が出てくるのか非常に楽しみなイベントだったりします。「80年代クラブミュージック」というのは自分でも未開拓な部分があるのも大きいですが。
(自分が生まれたのは80年代前ですが…このジャンルは未チェックなのです)
後は譜面がどうなるかですね。5鍵メインとはいえ、LNが制限されているような事は書いていなかったので…☆5のLNメインで80年代クラブミュージック系というのも十分ありえそうな気もします。
投稿: アムドラあかり | 2010/11/20 16:25
長らく返信をサボって放置していてすみませんでした…。
>waku2tanさん
主催お疲れ様ですー。
初日は登録が少なくてどうなることかとも思いましたが、最終的にはかなり賑わいましたね。
すでに長丁場の評価期間に突入していますが、中だるみしたり停滞したりしないよう、
これからも辣腕を振るってイベントを盛り上げてください!影ながらご支援させていただきます。
>ポポスさん
ああ、やはりそっち系のエレクトロは絶滅しているのですか…。
白状してしまうと、私はBMSとYouTubeくらいでしかクラブ音楽に触れないダメ人間なので
ポポスさんのような現場事情に通じた方からお話を伺えると大変タメになります!
絶滅ジャンルと会えるなんて、Oz'Beatsはノアの箱船みたいなイベントですね。ちょっと違うか…。
>アムドラあかりさん
80年代クラブミュージックに精通してる人のほうが圧倒的少数派でしょうしね…。
それこそ40代くらいでないと厳しいかと。私なんかはまだ若干17歳なのでとてもとても(ゲフンゲフン)。
譜面は私も楽しみにしていましたが、LNやギミックは少なめで伝統的な譜面が多かった印象でした。
80年代=初期BEATMANIA、みたいなイメージが作者さんの間では強かったのかもしれませんね。
皆さんコメントありがとうございます。お返事が遅くなって申し訳ありませんでしたm(_ _)m
投稿: s_miho | 2010/11/27 00:18