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2011/03/03

Caterpillar Song / 溥儀ゆら原子の力しきみmashana与作

Caterpillar_bn

[TRIP HOP] 
Caterpillar Song / 溥儀ゆら原子の力しきみmashana与作

(from "THE BMS OF FIGHTERS 2010 - The Evolution of War -")

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チーム対抗イベント "BOF2010" 登録作。 [大人数チーム] チームのエース作品。
スコア 8/278位(偏差値77.8)、中央値 5/278位(偏差値64.0)。
 

タイトルから直感的には読み取りにくいですが、『不思議の国のアリス』をモチーフにした作品です。
『不思議の国のアリス』といえば、創作分野において非常にメジャーなテーマのひとつです。
夢と冒険のディズニーアニメを筆頭に、映画化・音楽化・書籍化されることは数知れず。
BMSでもyujurieさんの“Alice...”がメガヒットして Groundbreaking 2009 に収録されたほか、
近年ではLiTaNiaさんの“寄り道アリス”、chiArosCuroさんの“Artificial Sacrifice”などが発表されていますし、
Damjoy(tarolabo)さんの“The Lady Is A Trump”あたりも『アリス』の影響を受けているかもしれません。

モチーフとしてこれほど人気な理由としては、「ナンセンス文学作品で、意味づけや解釈が自由に出来ること」、
つまり「作者の個性や味が存分に出せて面白いこと」というのが、第一の理由といえるでしょう。
実際、上述のyujurie版アリスは「不穏で底知れないエレクトロニカ」、LiTaNia版は「穏やかボカロポップ」、
chiArosCuro版は「東方ヌーガバ」など、同じアリスBMSでも作者によってそのアプローチは千差万別です。

では、奇才として名高い溥儀さんが『アリス』を解釈してみたら一体どうなるでしょう?
という私たちにとっては夢の企画といえるBMSが、この“Caterpillar Song”なわけですが、
そこには凡人の私たちが想像し得ないような、魔性の不思議の園がアリスを手招きしていたのです…。

 
(Lyrics)

キャタピラーソング、日本語に訳せば「いもむしの歌」ということで、
原作の登場人物のひとり(一匹?)である「いもむし先生」をフィーチャーしています。
『アリス』の劇中ではほんのチョイ役なので、ピンと来ない方のために説明しておくと、
背が縮んでしまって途方に暮れるアリスに、大問答のすえ大きくなる方法をアドバイスしたキャラです。
端役ではありますが、溥儀さんは過去に “「無垢」について” のBGAでもいもむしを扱っていたりするので、
いもむしには並々ならぬ思い入れがあるのかも知れませんね。 

Caterpillar_jtsashie


 

  (←左図)

 『アリス』の挿絵で最も有名な John Tenniel のいもむしを引用。
 キノコに乗りパイプをふかしている変な生き物がそうです。キモい。 
 

 

 

さて、楽曲の世界に足を踏み入れると、早速その禍々しい光景が、私たちの常識を覆しにかかります。
いきなり冒頭の映像から、バラバラになったアリスの生首や四肢がぶらんと降ってくるのです。
なんて奇想天外で悪趣味なBGAでしょう。ディズニー版アリスのような愛らしさなんて微塵もありません。
あたかも「メトロポリタン美術館」の映像に通じるような、幼い時に見たらトラウマになりそうな情景は、
メルヘンどころかメンヘルといったほうが正しいくらい、溥儀版アリスの不気味さを象徴的に表しています。

度肝を抜かれた私たちに追い打ちをかけるのが、毒々しくデコレーションされた妖しい音使いです。
リズムを担う低速ブレイクビーツや、キュッキュッと弦をこする音は、あたかも異形の生物の蠢きとなり、
グロテスクさ・エレガントさ・背徳感・退廃美など、聴き手に様々なイマジネーションを呼び起こします。
一方、ハープのグリッサンドや伴奏の木管アンサンブルなど、オーケストラサウンドは絶世の美しさですが、
豊かすぎる色彩感はもはや警告色の域に達しており、鮮やかで耽美なぶんだけ強い毒を思わせます。
これだけ禍々しさに溢れているのに、それでも私たちの興味を惹きつけて止まない本作は、
なにか楽曲全体から妖艶なエキスが発せられているようで、耳から体が溶けていく感覚すら覚えるでしょう。

そして極めつけなのが不条理でナンセンスな唄と歌詞。これが世界観を果てなく深いものにしています。
歌詞はどう進んでも「いもむし先生」に帰結する無限の言葉遊び。まるで出口のない迷路のようです。
葉月ゆらさん演じるアリスの、ラップとも語りともつかぬボーカルは無垢で、少女らしい可愛さも見せますが、
この倒錯の世界観のなか、不安も動揺も感じさせないピュアな歌い方は、返って不気味さを増幅させます。
「もはやアリスはこちらの世界の人間ではなく、向こうの世界の住人になってしまったのだ…」
さながら不可避のバッドエンドを辿っているような本作。アリスが元の世界に戻れるかは貴方の想像次第です。
 

譜面的にはやや苦しい感じもするので、BMSに高難度譜面やゲーム性を求めている人には向きませんが、
音楽と映像の作り出す世界を楽しみ、没入して味わうことのできる人には、この上なくオススメの一作です。
私もかれこれ10年以上BMSを遊んできましたが、世界観部門なら本作が史上ナンバーワンと断言できます。
薄っぺらいハリボテ感なんか全く漂わせない、精巧で計り知れない溥儀版アリスの世界をご堪能ください。
 

折しも2011年はうさぎ年です。この“Caterpillar Song”を溺れるほどにヘビープレイしたならば、
あなたの前にも懐中時計を持った白うさぎが現れて、いもむし先生のもとへと導いてくれるかもしれませんね。


DL : BOF2010 会場より
http://manbow.nothing.sh/event/event.cgi?action=More_def&num=196&event=65

 
 
 
 
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mp3(フルバージョン)は Groundbreaking -BOF2010 COMPILATION ALBUM- に収録されています。

Bnr_gdbg2010

http://gdbg.nekokan.dyndns.info/2010/
 
 
 
(この記事は2011/07/24に追記されました)

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